テーマその① 環境はカロリー

「環境はカロリーになる。」

日々の生活の中で、いつも感じていることです。

 

食べ物は、直接的な身体をつくる栄養ですが、

私は、私たちを取り巻く環境も、身体のエネルギーになるものと感じています。

新緑の木々はビタミン、こってりした土壁はタンパク質、鉄やアルミなどシャープな

金属はスパイス。

それらを無意識に摂取しながら私たちは生活していると思うのです。

 

自分の身体のいちばん身近な環境は「家」です。

家は、そこに住まう家族の滋養、エネルギーになる環境だと思います。

だから、家をつくる素材の吟味はとても大事。

骨組みや床に張る木材、壁に張る素材、塗る素材、

住まう人の“味覚”に合わせて、バランスよく味付けするようにデザインしたいと

思っています。

例えば私の家の場合、木や土の素材感をメインにしながらも

そういった自然素材に偏りすぎると胃がもたれるので、、

鉄やアルミなどをスパイスとして入れたり、お口直しのウエハースのような合板も

ふんだんに使っています。

 

そう、建築は素材を活かした一大料理でもあるのです。

 

食べ物の産地にこだわるように、建物の素材の産地にもこだわるのは

ごく自然なことだと思います。

すべてが地場産、国産とはいかないかもしれませんが、

家に使われるさまざまな素材が、どこで生まれてどう育って(作られて)きたか

それを知った上で使うことが大事なのだろうな、と思っています。

テーマその② 自然とつながるデザイン

“アスクネイチャー・デザイナー”という肩書きでデザインの仕事をしています。 

 

これまでも自然界の中に手がかりを求めて建築をデザインしてきました。 

それはハチの巣の構造であったり、いもむしの形態であったり、鳥の巣のように立地の半径数キロ圏内から(建築の)素材を採集することであったり。 

当時は、ただ自然界の法則や作法にデザインの手がかりを求めていました。できるだけ自分の作為に陥らぬよう、かたちや作り方に普遍性を見出したかったからです。 

 

地域の素材を使って建築を作ることにこだわったのは、地産地消というエコ的な観点よりも、ただ鳥のように、身近な素材を採集して営巣する生理的な行為に惹かれたからでした。 

そして、土地の資源を最大限に活かす主旨で生まれた住宅“earth gift”は、現場周辺で採れる美しいサーモンピンクの土を素材とし、その地域ならではの職人さんの技術など、土地のgift(=恵み、才能)を引き出すことにこだわりました。

(※「これまでの建築の仕事」参照)  

 

しかし。なぜその土地の資源にこだわり続けるのか。 

鳥やハチではない人間に、エコという概念抜きの本能的な動機があるのだろうか・・そんなことを初めて考えさせられたのが、図らずも現在建築中の私自身の家の現場でした。 

 

南大阪に建築中の自宅はコンパクトな29坪ほどの家ですが、予算もコンパクトであったため・・・あえて地域材へのこだわりを捨て、木構造部分は安価な流通材で建てざるを得ませんでした。 

納得していたこととはいえ、木の骨組みが立ち上がったとき、何か大事な手がかりを失ってしまったような寂しさを全身で感じたのです。

そんな気持ちが少し晴れてきたのは、日々手足が触れるフローリング材などを近隣の山で育った桧や杉にえいやっと変更してからのこと。

この一件を通して、なぜ地元の素材にこだわるのか、これまで無自覚だった動機をおぼろげに感じるようになり、今やそれを思い知るに至りました。

私にとって地域の素材を使うことは、家がその土地とダイレクトにつながることであり、住まい手として土地とつながっていたいという生理的な欲求だったのです。

 

これは自ら施主になってみなければ分からなかったことでした。

建築士である自分は、メッセージとしてのコンセプトに重きを置きがちでしたが、それを受けとめる施主側に立ってみると、言葉や概念ではなく、素材のもつ圧倒的なリアリティだけで足りるのです。長年住み暮らした相性の良い地域で、さらに土地とのつながりを感じて生活したい気持ちにこの土地で生まれた素材はシンプルに応えてくれます。

自らが生きる環境、自然とつながっていたいという欲求は人間本来備わっているものであり、バイオミミックリーの発動力になっているのではないでしょうか。

 

ここ一ヶ月、現場で熱中しているのは、近所の山の造成工事のときにいただいた土砂を目の細かいざるで振るって外壁に塗る土に仕立てることです。 

 

土砂バケツ5杯につき、壁土はやっとバケツ1杯ぐらいしか取れませんが、日々この作業をもくもくとやっていると、いつのまにか自分が施主であることを忘れてしまいます。

何か、この土地の神様に、家というかたちの大きなお供え物をしているような不思議な感覚なのです。

ただ設計しただけでは足りず現場での作業を通して体感していることですが、人間はこんなふうに自然と付き合ってきたのだと、自分の中にある何万年か前からの遺伝子が教えてくれたようです。

 

アスクネイチャー・デザイナーとして、ソーラープランツやソーラートンボのデザインに関わってきましたが、自然のシステムとデザインでつながれる喜びが大きな動機になっているのをますます感じています。 (※「デザインの仕事」参照)

 

自然は確かにいろんな学びを与えてくれるけれど、その自然とつながれるツールは個々の人間の開かれた感受性なのだろうと思います。

すばらしい叡智をもつ自然、それを素直に、時にユニークなかたちで感受し社会に活かすことのできる人間は、豊かで幸せな生きものだなあとしみじみ思うのです。 

テーマその③ “園”のデザイン

(執筆中・・・)